粉は魔物。それってホント!?
みなさん、こんにちは。ダルトン粉体機械事業部の新人、そして「粉バナ」編集部員の粉花です。本日も「粉バナ」をご覧いただき、ありがとうございます!
前回の記事では、「粉のいろは」を先輩のダルトモさんからたっぷり教わり、おかげで粉への理解がぐっと深まりました。読んでいただいたみなさんも「粉って意外に奥が深いな」と感じていただけたのではないでしょうか?
さて、今回のテーマは粉体業界でよく耳にする謎めいたフレーズ、「粉は魔物」について。「魔物」なんて大げさな表現がされる理由、気になりますよね? さっそく、粉に詳しいダルトモ先輩に聞いてみました!
「粉は魔物」ってどういうこと?
粉花「さっき〈粉は魔物だよ〉っていわれたんですけど……どういうことですか?」
ダルトモ先輩「粉は魔物…、ぼくも新人のころによくいわれましたよ」
粉花「えっ、本当なんですか!? なんだかちょっとコワいです」
ダルトモ先輩「まあまあ、落ち着いて。確かにこの業界ではよくいわれるけれど、粉が人を襲うわけではありませんよ(笑)。〈粉は魔物〉という言葉は、粉の取り扱いがどれだけむずかしいかを表現しているんです」
粉花「でも、粉ってすごく小さくて、サラサラしていて……私はむしろかわいいって思っちゃいます」
ダルトモ先輩「その“小さくてサラサラしている”がくせ者なのです。粉は微小な物質の集まりだから、周りの環境の影響をとても受けやすいのです。風が吹けば舞い上がるし、水にふれると簡単に溶けたり、かたまりができてしまったりする。さらに、異物が混じりやすいっていう厄介な一面もあります。そのうえ、環境や条件が少し変わるだけで、性質そのものが変わる場合だってありうる。だから〈粉は生きている〉なんていわれることもあるんですよ」
粉花「粉は魔物であり、生き物でもある…って、ますます恐ろしく感じてきましたよーーー!」
粉の扱いは、なぜむずかしいのか。
粉花「粉は取り扱いがむずかしいから、魔物と呼ばれていることはわかりました。具体的にはどこがむずかしいのですか?」
ダルトモ先輩「たくさんありますけど、粉体機械を扱う私たちが頭を悩ませるのは、詰まる、固まる、飛び散るですかねぇ」
粉花「ギュッと詰まったり、パァ〜っと飛び散ったり? ……それは確かに魔物っぽい。どうしてそうなるんですか?」
ダルトモ先輩「要因は多様ですが、粉が詰まったり、固まったりするのは、空気の量や湿度に左右されるケースが多いですね。乾燥して空気がほどよくある環境ならサラサラとしているけど、湿度が多いと粉同士がくっついて固まりやすくなる。また、それとは逆に液体のように流れ出す〈フラッシング〉という現象もあります。フラッシングとは、粉が噴き出して飛散する噴流のこと。噴流性が高い粉ほど空気をたくさん含むので、流動性が高まって液体のような状態になります。そうなると、粉が急に噴き出すなど予想外の動きをするのでコントロールしにくくなるのですよ」
粉花「粉が液体みたいになる!? 知りませんでした」
ダルトモ先輩「あと、物質には小さなものほどくっつきやすいという特性があるのを知っていますか?」
粉花「そうかも! 小麦粉は手にくっつきやすいし」
ダルトモ先輩「小さな粉が付着しやすいのにはいくつかの理由があって、そのひとつが表面積の増大です。同じ体積でも、大きなかたまりと小さな粉の集合体では、後者のほうが表面積は大きくなります。表面が広いということは、ほかの物質と接する面も広くなるということ。面と面で相互作用が起こって、くっつきやすくなるというわけです。それに、表面積が大きくなると、摩擦によって静電気も発生します。帯電量が増えると、粉同士がくっつくだけでなく、容器や器具にも付着します。すると、粉がうまく流れず、詰まりの原因にもなってしまいます」
粉花「静電気も関係しているんですね。そういえば、服に静電気が溜まるとホコリがいっぱいくっつきます」
ダルトモ先輩「とくに乾燥しやすい冬場は静電気が溜まりやすいので、注意してくださいね」
小さな粉ほど燃えやすい。
ダルトモ先輩「粉にとって静電気は大敵で、トラブルを引き起こすリスクも高くなる。粉花ちゃんはさきほど、服に静電気が発生するといっていましたよね。静電気があると、どんなことが起こりますか?」
粉花「パチパチと音がして、暗い場所だと火花が見えるときもあります」
ダルトモ先輩「その火花! 静電気による火花が引き金となって、粉が燃える場合があるんです」
粉花「静電気の火花だけで燃える? 粉って燃えにくいイメージがあるんですけど…」
ダルトモ先輩「燃えやすさも粉の特性のひとつです。小さな粉は表面積が大きいから摩擦によって静電気が発生したり、発熱したりする。微小な物質であるがゆえに、少しのエネルギーで点火できてしまう特性もあります。また、物質は空気中の酸素と結合して酸化しますが、表面積が大きいと空気と接触する面も広くなって酸化速度が早まる。酸化が進むと、発熱や発火してしまう恐れもあるんです。つまり、物質は小さく細かいものほど燃えやすいということ」
粉花「細かい粉ほど燃えやすい。失敗しないよう覚えておきます!」
ダルトモ先輩「実をいうと、納品した装置内で粉が発火してしまった……という失敗をぼくもしたことがあります。どれだけ準備を整えていても、気温や湿度、それに素材の状態が影響して予期せぬことが起きる場合がある。粉体機械を扱っていると、こうしたリスクは避けられないのですよ」
粉花「予期せぬことが起こってしまったら、どうしたらいいのでしょう?」
ダルトモ先輩「リスクを最小限にするために重要なのが、事前のシミュレーションと対処法の情報共有です。お客さまといっしょに予測できるトラブルを想定し、〈起きてしまったときはどうするか〉をあらかじめ共有しておく。これを徹底しておけば、大ごとになる前に対応できますよ」
ホントは、粉は魔物じゃない?
粉花「粉は取り扱いがむずかしいからこそ、粉体機械を使用するお客さまとのコミュニケーションが大切なのですね!」
ダルトモ先輩「そのとおり! 私たちは粉を扱う粉体機械を販売しています。〈機械〉だからいつでも正しく機能すると思われがちですが、多様な特性をもち、外部の影響を受けやすい粉を扱うのは至難の業。とくに日本には四季があるから、季節による温度や湿度の変化は予測できません。テストでトライ・アンド・エラーを繰り返して最適解を見つけ出し、お客さまには最適なシステムを提案しなくてはいけません。さらに、販売後のフォローも必須です。何が起こるかわかりませんからね」
粉花「ダルトモ先輩ほどのベテランでも予測できないことがあるなんて、やっぱり粉は魔物ですね…」
ダルトモ先輩「そんなに恐がらないでください。確かに粉は手ごわい相手ですが、私たちにはこれまで培ってきた経験と知識をもとにしたノウハウがあります。たとえトラブルがあっても、原因と対処法がわかれば大きな問題にはつながらないし、その情報を共有しておけば次のトラブルも防げます」
粉花「ダルトンの粉体機械事業部には経験豊富なみなさんがいますもんね! ちょっと安心できました」
ダルトモ先輩「粉は環境や状況に応じて変化する物質です。取り扱いには細心の注意が必要ですが、しっかり理解して正しい扱いをすれば思い通りに動いてくれる頼もしい存在になります。魔物として恐れるのではなく、良いものづくりをするための仲間だと考えて接してほしいですね」
粉花「粉は魔物ではなく、ものづくりの仲間。そう思えるようがんばります!」
最後までお読みいただき、ありがとうございます! 「粉は魔物」だといわれる理由と、きちんと理解すれば「粉は仲間」になることを学び、少し安心できました。
次回のテーマは、年末年始の料理づくりに欠かせない「調味料」について。調味料にサイズの異なる「粉」と「粒」がある理由を解き明かしていきます。どうぞお楽しみに!